閑静な住宅街で起こった殺人事件。 それは遺体から手首を切り落とすという猟奇的なものだった。完璧な様で稚拙な証拠隠滅に問題なく犯人特定に至るものと思われていた事件は意外にも、初動捜査の段階で行き詰まりを見せる。その中で捜査一課の刑事・小林秀は、過去に関わった或る事件との共通点に気づく。今回の事件と同じ時系列の展開を見せはじめる過去の事件。混迷を極めていく捜査の中、襲われ重傷を負う小林。この出来事をきっかけに、小林の記憶は断片的に欠落し始める。それでも犯人逮捕に執着する小林には、消し去る事の出来ない過去の傷があった。幼少期に両親を殺害されて失ったという過去。痛切な想いを胸に刑事として生きてきた彼が、失われていく記憶の先に見た事件の真実とは――
精神科医・藤堂が自らの担当する患者に暗示を掛け殺人を促したとされる殺人教唆事件を担当した主人公小林秀ら警視庁捜査一課七係。しかし結局殺人教唆を立証出来ずにこの事件は終わってしまう。この物語は藤堂に制裁を加えた小林の謹慎が明けたところから始まる。小林と藤堂、そして殺人教唆。その因果関係が引き起こしたものとは?
閑静な住宅地で起こった殺人事件。豪邸のリビングに横たわる遺体。犯人に抵抗したことで傷付いたと思われる両腕に残された無数の切創。一見すると強盗殺人だが、遺体から切り落とされた右手首が刑事たちの捜査方針を覆す。切り落とされた右手首が意図するものは?
監察医務院で見付けられた遺体後頭部の陥没痕。直接の死因と診断されたその陥没痕は下から上へとすくい上げるように後頭部に衝撃を与えたものだった。両腕の切創。切断された右手首。そして後頭部の陥没痕。それぞれ異なる形状の傷が導き出す複数の凶器。何故それだけの凶器が必要とされたのか?
高級住宅地に住んでいながら残高の少ない預金通帳。妻子と別居し、離婚協議中の家庭事情。大手ゼネコン八橋建設の営業所長を解雇されたと思われていたが、実際は八橋建設から多額の退職金が支払われていた事実。そして自宅付近で目撃された不審者。被害者依田幸助の身に何が起きたのか?
殺人現場の浴室で犯人が血液を洗い落とした形跡がルミノールによる血液反応で明らかになる。同じくタオルからも検出された血液反応で犯人のものと思われる足痕が浮かび上がる。指紋などが全て拭き取られた現場に唯一残された痕跡が現すものとは?
紛失した手首、ひとつだけ残された足痕、拭き取られた指紋。共通点が余りにも多い23年前の殺人事件。被疑者死亡のまま処理され疑問が残るその事件を今回の事件はなぞるように進んでいく。同一犯か?模倣犯か?それとも・・・
事件発生からまもなく浮上した容疑者、元冨吉組構成員田端二郎と仁木則之。ふたりの身辺を突き止めようと捜査を進めるが仁木則之の所在が掴めない。ようやく辿り着いた住処にも仁木の姿はなく、派手に荒らされた室内がそこにはあった。失踪、逃亡、保護。あらゆる可能性が示唆される中、仁木はどこに消えたのか?